JR九州の諸施策についての思い

数年前から、JR九州(九州旅客鉄道)では「収支改善による持続的な鉄道サービスの構築」を目標として、各種施策が実行されています。 その中の大きなもののひとつが、先日、2022年3月12日ダイヤ改正時点から実施されました。

  • 駅営業体制の大幅変更
    • 駅窓口営業時間の短縮
    • 駅無人化
    • 取扱対象の乗車券類の縮小

今回の駅営業体制の大幅変更は広範囲に及び、幹線の特急列車停車駅であっても駅係員無配置時間帯が拡大したり、普通・快速列車のみ停車の駅の中には、 窓口こそ営業するものの午前中で営業終了となるなどしています。

私はまず、昨年末の駅営業体制見直しに関するニュースリリースを見て驚き、次いで、ダイヤ改正後の各駅の状況について見聞きして再度驚きました。 インターネット上における本施策に対する声はさまざまですが、私は何より「困惑」が先に立ちました。私以外にも困惑しているお客さんはたくさんいると聞きました。 私自信の困惑を少しばかり書きます。雑文にお付き合いください。

当初、ニュースリリースを見たとき、「きっぷ販売窓口の営業時間短縮」というのが、出札業務(乗車券類の発売)時間を短縮し、改札・集札(乗り越し精算など)業務は 従来通り実施するものだとばかり思っていました。私の家から最も近いJRの駅である鹿児島本線原田駅では昼12時までとなっており、その時間で出札業務は終了するものの、 駅員さんが普通にいて精算対応をするのかと思っていました。しかし、改正当日から入ってくる情報を見聞きすると、なんと12時を過ぎると窓口を完全閉鎖して無人駅の状態 になっているとのことでした。何かの間違いではないかと思って継続して調べましたが、昼以降はやはり駅員さんが全くいなくなるようでした。それだけではなく、駅発車標 (列車出発時刻の案内表示板)も、窓口営業時間外は消灯してしまって何も表示されなくなってしまうとのことでした。まさか。

さらに、きっぷ販売窓口の営業時間を短縮した他の駅の状況も調べました。原田駅の近く、基山駅は出札業務は午前中で終了していたものの、夕方の時点では改札・集札業務 は実施しているとの情報が得られました。一方で、原田駅同様に営業時間外は改札・集札業務も終了して無人駅状態になっている駅もあったとのことでした。

駅発車標が消灯している時間帯がある駅は数年前から複数駅見られており、その理由については最近情報が得られました。いわく、運行管理システム(JACROS)に接続連動 していない駅単独設置型の発車標システムは、ダイヤ乱れが発生したときにそれぞれの駅で設定をし直したり、あるいは「調整中」などとして使用停止措置をしないと いけないため、駅無人時間帯は誤案内の発生防止として一律使用停止の措置を取っているとのことでした。

情報を文章化してみましたが、自分でもますます困惑しています。どうしてこうなった。

理由のひとつとして推察され、インターネット上でも断定的口調で指摘されるのが「人件費関係のコスト削減」です。先に挙げた原田駅・基山駅は、ダイヤ改正前は5時台から 23時台まで出札業務を実施しており、一度に最低2名の駅員さんが対応していました。営業時間を午前中、朝7時半から12時頃までに短縮すれば、14時間分の勤務時間を削減でき、 確保すべき人の数も減らすことができると見られます。赤字が大きいならコスト削減しないといけないので「仕方がありません」。

もうひとつ、上記に関連しますが、「人員不足によりシフト編成が困難になったため、シフトが組めるような形にした結果、営業時間が不思議なことになった」ということも考え られます。シフトが組めなければ人を派遣できないので「仕方がありません」。

……しかし、なんとなくここで「仕方がありません」と諦めてしまうのはまだ早いのではないかと、自分は思いました。鉄道ファンの多くは、なまじ鉄道事業者の状況を少しでも 知っているがために諦めが早かったり、人によっては不満を表明する一般利用者を難じるところにまで至る向きがあるように感じます。乗車券類を買うこと、列車に乗るために 発車時刻やホームを知ることは重要な事項ですから、その部分の役務提供・情報提供には十分な対応を求めたいところであります。

もちろん、JR九州も無策ではないのは知っております。この事態に対応すべく、いくつかの施策が新たに実施されています。

  • 指定席券売機の新規設置(二日市駅、鳥栖駅)
  • 九州新幹線へのEXサービス(チケットレスサービスの導入)
  • PayPayによる特急券購入を可能にする実証実験
  • スマホ定期券の試行実施(佐賀県内・多久高校と太良高校の通学定期券)
  • 乗車券類発売窓口設置駅への往復に係る運賃の返還

しかし、この施策にも、うまく連携がとれていないちぐはぐな面があるようです。代表例が諫早駅に関して寄せられた情報です。

諫早駅では2022年3月12日以降、みどりの窓口の営業時間が短縮され、特急「かもめ」の数本が窓口営業時間外に発着するようになりました。これに対する措置として指定席券売機 の導入が西九州新幹線開業となる「半年後に」行われるとのことで、この半年間は応急的に特別措置をもって対応するとのことでした。その特別措置は「インターネット列車予約の 乗車券類受け取りができていない人は、乗車列車の車掌か、着駅で駅係員に知らせてくれ」というものです。改正当日のレポートによりますと、博多駅にて早朝の特急「かもめ2号」 から下車したお客さんが、有人改札口に長い行列を作っていたそうです。

「対応できているからいいのではないか」や「事前に受け取っておけばよい」とする向きもあるかもしれませんが、利用客のみならず駅の改札窓口にも負担がかかる事態は好ましい とは言えません。このような措置が、時間帯・列車限定とはいえ半年間に渡って続くのは問題だと思います。

これは私の勝手な想像ではありますが、JR九州は施策を急激に前倒ししたり、急激に変更したりしたのではないでしょうか。本来なら5~10年程度かけて実施するつもりにしていた サービス改革を、新型コロナウイルス感染症の影響による経営難で早く実施する必要性に迫られたのではないでしょうか。もちろん、施策を実施するとして、利用客が困惑する事態 は最小限にしなければなりませんし、今回の状況は困惑を最小限に抑えられたとは言い難いように思います。もし、これがそもそもの計画通りの時期に実施したのだとしたら、状況 の見通しに失敗していたのではないかと疑う余地が残ります。

利用者としては当たり前に列車に乗り、当たり前に目的地へ行き、用事を済ませたり遊んだりしたいわけです。それがスムーズに行えることを念頭に置いて施策を進めてほしいと思います。

今回は駅業務体制の変更の観点から感想を述べました。次回以降、感想を掘り下げて話を展開するか、他の施策についても見ていくかして、あと少しだけ話をしていきます。